予防としての矯正治療
8020運動というのは、80歳までに自分の歯を20本は残そうというもので、1989年より歯科医師会と厚生労働省が提唱してきたものです。20本あれば食事を楽しむことが出来るということで、この運動が始まった当初の8020運動達成者というのはわずか8.2%だったのが、去年で38.3%まで達成者が増えてきたという発表がありました。(当初80歳以上の方の残存歯を見てみると平均で4.5本)
これを踏まえて最近東京医科歯科大学の行われた調査があります。 8020運動の達成者に対しての歯並び、噛み合わせ調査をしたところ、「ほぼ全員に著しい不正咬合が見られなかった」という結論がでました。
著しい不正咬合とは、上顎前突(出っ歯)、下顎前突(受け口)、重度の叢生(デコボコ)などを指しますが、この調査から歯並びと噛み合わせが残存歯に大きく影響を与えていることが見て取れます。
歯ブラシの改善や、ブラッシング指導を行う歯科医院が増えてきたことなど様々な要因から8020運動の達成につながってきているとは思いますが、不正咬合がないことにより、さらに磨き残しが減り、虫歯、歯周病の可能性が下がってきているというのもいえるのではないでしょうか。
歯列矯正はもともと見た目の審美的な要素が強い分野だったかもしれません。しかし、今回の調査のように予防の観点からの矯正治療の意義が広がってきていると思います。最近では噛み合わせが肩こりや偏頭痛につながる場合があることも知られてきています。
見た目だけでなく、健康、予防など少し広い意味での矯正治療の価値がお伝えできればと思います。