セルフライゲーションについて
ブラケット(矯正装置)には様々な種類があります。材質の観点から言うと、金属製の装置や透明で目立ちにくいセラミックやプラスチック、中には金で出来たブラケットなどがあります。今回は材質的な種類ではなく機能面で特徴があるものとして、セルフライゲーションを取り上げてみます。
セルフライゲーションという装置は「セルフ=自己で」と「ライゲーション=結紮する、縛る」という言葉が語源になっています。本来の矯正治療の方法だと、矯正用ワイヤーとブラケットを小さなリング状のゴムや、細い針金のようなワイヤー(結紮線)で縛り付けるやり方が主流でした。それに対してセルフライゲーションは結紮にあたる機能をシャッターやクリップ構造をブラケットに入れることで、ワイヤーとブラケットをつなげます。これによりあまり強い力をかけない治療をすることが出来ます。有名どころでいうと、デイモンシステム(デーモンシステム)やクリッピーというセルフライゲーションブラケットがありますが、人によっては目にしたこともあるのではないでしょうか。最近では見えない裏側矯正(舌側矯正、リンガル)においてもセルフライゲーションの矯正装置が出てきています。
セルフライゲーションは本格的に広まってきてから歴史が浅いのですが、なぜこれまでの結紮するタイプの装置ではなくセルフライゲーションが増えてきているのでしょうか。理由はいくつかあると思いますが、ワイヤー交換が簡便であることや治療中の痛みが少なくなる可能性があることなどが大きな理由として挙げられるでしょう。また矯正専門医の間でも意見が分かれるところですが、治療期間の短縮が期待できることや歯根吸収のリスクが少ない、なども良く言われています。
そのため一時期は、セルフライゲーションを採用している医院のうたい文句として「治療期間短縮」「痛みが少ない」「非抜歯」の文字が独り歩きしてしまったこともあります。セルフライゲーション装置は従来の結紮タイプの装置とは特性が異なるため、知識と経験が必要になってきます。もちろん、セルフライゲーションにメリットはありますが、デメリットもあります。またどんな良い矯正装置を使用しても、最終的には矯正専門医の診断と治療経験が最も大切な要素になります。しっかりと診断を受けた上で、どの治療方法で歯列矯正をすべきかを納得するまで話し合って決めていっていただければと思います。